ポイント
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体内にある細菌などが血液中に入り、細菌や毒素、感染に対する反応物質(サイトカイン)などで全身に重篤な症状がおこった状態が敗血症です。普通は、細菌などが血液中に流入しても免疫系の働きにより排除されますが、重度の感染症にかかっていたり、特に犬の免疫力低下していたりすると細菌を排除する事が出来ずに菌が体内に滞在して敗血症がおこります。発熱(熱が上がったり下がったり)、持続性発熱(熱が続く)、跛行(はこう)、食欲不振、嘔吐、元気消失、呼吸が荒い、心雑音などがみられます。これらの症状は敗血症で心臓血管系と血液、リンパ、免疫系が影響を受けた結果で、血流が不足して臓器が機能不全に陥る敗血症性ショックを起こし、血圧が低下して体温も下がり死に至ることもあります。跛行の原因として敗血症性関節炎が多く見られて関節が炎症を起こし、食欲不振、嘔吐、元気消失などがあり、歩くのを嫌がります。
原因となりやすい病気としては、胸膜炎、肺炎、子宮蓄膿症、腹膜炎、前立腺膿瘍、腎盂腎炎などがあります。他の病気とは関係なく特に、基礎疾患がある場合や高齢犬、幼犬は免疫力が低く、敗血症になりやすいといえます。急性の場合は子宮蓄膿症、胃腸損傷が関係することが多く徐々に起こった場合は、皮膚、尿管、口腔、前立腺などからの細菌感染が原因と考えられます。犬の敗血症では原因菌の多くが大腸菌や黄色ブドウ球菌の感染が多く見られ、この場合は大型犬種の雄でよく見られます。また、外科手術後であったり、糖尿病、腎不全、肝不全、低蛋白血症、腫瘍などや火傷や創傷の治療中であるなど、免疫力を低下させるような状態は敗血症の発症を引き起こす原因となります。
原因となる病気の除去と、薬剤感受性検査で原因となり得る細菌を採取し、原因菌の特定で適切な原因菌に効果のある抗生物質療法による細菌の排除が特効薬です。また、低血圧に対する治療と子宮蓄膿症、前立腺膿瘍、腹膜炎、壊死組織を伴う傷などの損傷は外科手術も必要になり、膿瘍などの場合には、排膿などが行なわれます。敗血症性ショックを起こしている場合には、輸液療法により体液の循環状態の改善をはかり、ショックに対する治療を行います。症状が安定すれば適切で十分な栄養も摂取できるようにしましょう。