ポイント
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前立腺は、尿道を囲むように膀胱の真下に存在し、オスだけの臓器でもあります。主な機能は、精液を生産、射精時における収縮や尿の排泄を補助するなどです。前立腺炎は尿道から入り込んだ前立腺に細菌が感染し、激しい痛みを伴う炎症を引き起こしてしまった状態を言います。4歳齢以上の未去勢犬の約 60%以上に前立腺障害がみられ、老犬・高齢犬に多く見られる病気です。急性の場合は、激しい痛み、発熱、嘔吐、食欲不振、排尿障害があります。痛みが激しい時は、背中を丸めてうずくまり、腹部を触られるのを嫌がります。前立腺が肥大して症状が進行すると、膀胱や腸を圧迫し、排尿や排便が出ずらい影響や痛がる事があり、血尿が出る場合もあります。一方、慢性のものは無症状なので、症状がわかりにくく、治療が遅れる為に前立腺に繁殖した細菌が膀胱に広がり膀胱炎などを併発する恐れもあります。また、前立腺の肥大もみられません。
尿道から入った細菌が、前立腺のに感染して炎症を起こしたものです。また、膀胱炎から前立腺炎を併発する事もあり、稀に他の場所から細菌が血液と一緒にたどり着く場合もあります。他に、陰嚢に針を刺す手技や尿道カテーテル挿入によって、細菌が入り込むこともあります。慢性前立腺炎は、急性前立腺炎より時間が経過すると発症してしまい、嚢胞内に膿が貯留すると前立腺膿瘍を引き起こす事もあります。
X線検査(レントゲン検査)、超音波検査、血液検査、直腸検査、前立腺液の細菌の有無で、前立腺の診断・肥大を行います。診断が確定したら治療は抗生物質中心の投与を行います。また、去勢手術を施します。去勢手術で前立腺の大きさを小さくして、細菌感染を減退させることで、再発防止になります。抗生物質は長期間(約 1 ヵ月)経口投与します。慢性前立腺炎では再発が起こるため、治療を3ヵ月することもあります。この病気は放置すれば慢性化したり、全身症状を示す敗血症に進行することがあります。抗生物質を使用する期間もかなり長くなり、細菌感染が残っていると前立腺腫瘍を起こすこともあります。内科治療の効果が乏しい場合は、前立腺を切除します。前立腺腫瘍になった場合、有効な治療方法はありませんので、前立腺炎を根気よく治療していきましょう。
予防としては、去勢手術が効果的です。
未去勢の犬は、ホルモンバランスが崩れて前立腺疾患の原因になるからです。
しかし、去勢手術をすれば、必ず前立腺疾患にならないわけではありません。慢性前立腺炎の場合は、無症状なので、定期的な健康診断をしておきましょう。