ポイント
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ほとんどの犬が突然発症し、下痢、嘔吐、食欲不振になります。回数の多くない泥状の下痢は出血をともない、悪臭のある脂肪便を出すこともあります。激しい腹痛も現れ、腹痛のため体を丸めたり、伏せの状態でお尻だけ上げる姿勢にもなり、横になることも出来ません。重症例では黄疸、消化管出血、虚脱状態におちいり発熱や多臓器不全でショック死することもある緊急疾患です。
膵臓は破損・損傷しまうと治癒に時間がかかる器官です。膵臓内に保管されている膵液がさまざまな原因により活性化され、膵液が膵臓内に逆流し、膵臓自身が消化することで生じます。各種の酵素も活性化させてしまい、炎症や壊死から生じた物が血液やリンパ液に流入してしまうと全身性炎症性反応症候群や急性腎不全、播種性血管内凝固などの重篤な併発症が引き起こされてしまうと死亡率も高くなります。膵炎は激しい嘔吐、腫瘍や異物などで膵管が閉塞した時、事故などの膵臓の損傷、副腎皮質機能亢進症・糖尿病・甲状腺機能低下・上皮小体機能亢進症症などの疾患、細菌や寄生虫の感染、手術、ステロイド剤・利尿剤などの薬物投与などの様々な原因です。また普段では特に脂肪の多い食事、肥満している犬、メス犬が膵炎にかかりやすいのです。犬種はミニチュアシュナウザー、プードル、コッカー・スパニエル、ウェスティ、ヨークシャーテリア犬が膵炎を発症する傾向があります。ミニチュアシュナウザーは遺伝的に存在する脂肪代謝異常で、膵炎が起こることいわれています。
急性膵炎では重症化を防ぐために早期の治療を開始することが原則でX線検査と血液検査で総合的に診察します。軽症であれば膵臓の消化機能を休息させる為、3日間絶食・絶水が必要で嘔吐や腹痛がが終われば水分から与え徐々に低脂肪食を与えていきます。場合によっては1週間もありますのでその間は輸液が必要となります。初期治療は輸液による循環血液量の確保、制吐剤、鎮痛剤、抗生剤による腹痛の緩和が行われます。ショック状態の場合、直ちに輸液を中心とした集中治療を開始しなければなりません。ショック状態から回復したら、内科的治療で維持します。外へ出た酸素の働きを抑える為に、膵臓の分泌を止める薬剤や抗生物質も必要になります。ショックから回復しなければ緊急手術を実施しますが、危険が極めて大きいことを認識しなければいけません。軽症の場合の予後は良好ですが、重度になると膵臓だけでなく各臓器に合併症や全身的な併発症が生じ、それらの治療と同時進行していかなくてはいけません。その為、予後不良となることも多い疾患です。急性膵炎には特効薬がなく、時間とともに自然治癒で治ってもらうしかありません。なので根本的な治療というわけではなく、治ったように見えてもダメージを受けた膵臓が元通りになることはありません。普段の生活は肥満に気を配り、高脂肪食は控えましょう。治療後も特に高脂肪食は与えてはなりません。