ポイント
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前立腺は、尿道を囲むように膀胱の真下に存在し、オスだけの臓器でもあります。主な機能は、精液を生産、射精時における収縮や尿の排泄を補助するなどです。去勢手術をしていない高齢犬にみられ、初期は無症状で経過します。症状の進行に伴い前立腺が肥大すると、前立腺の上の腸や前の膀胱、尿道を圧迫するため、様々な症状が出ます。腸を圧迫された場合は、便秘もしくは細い便がダラダラ出るようになり、膀胱の場合は、尿道を狭くしてしまうため、尿が出にくくなり、いつまでも少量ずつしていたりもします。さらに前立腺組織内部に嚢胞が形成され、血尿や尿道からの血様の排泄物が見られるようになります。完全に排尿が出来なくなると全身状態の悪化から命に危険が生じる事もあります。犬は食欲がなくなったり、症状が進むと後半身がふらついたらりします。前立腺肥大で、細菌感染が起こりやすく、細菌性膀胱炎を併発することもあり、逆に細菌性膀胱炎から前立腺炎が併発する事もあります。さらに、細菌性膀胱炎から腎臓の疾患にもつがなることもあります。また、中には便秘が続き、きばることによる会陰 ヘルニアを合併するものもあります。
去勢をしていない5~6歳以上の高齢になって精巣から分泌されるオス性ホルモンとメス性ホルモン量のバランスが崩れることが直接の原因となります。精巣はオス性ホルモンとメス性ホルモンが作られていて、その中でオスホルモンの分泌量の影響が、大きく関わっていると言われます。もう一つは何らかの腫瘍や、体質で、元から肥大傾向の場合もあります。肥大は良性・腫瘍性・細菌性によるものがあります。
治療臨床症状、血液検査、尿検査、触診、直腸検査、レントゲン検査、超音波検査(エコー)などを総合して診断します。通常は血液検査、尿検査には異常がみられないことが多く、他の疾病による異常との区別が必要です。治療は去勢手術を中心で、男性ホルモンの濃度を下げて前立腺を縮小させます。軽い便秘や前立腺の肥大だけにとどまる場合は、食事療法(食事に繊維質や浣腸で便秘の緩和)や内科的(内服)な治療をしたり、ホルモン剤の投与で前立腺の肥大を遅らせる方法もあります。しかし、前立腺がかなり大きくなっている場合は、手術によって摘出する他ありません。しかし、この方法はかなり重篤なことが多く、手術も簡単ではありませんが、去勢手術でほとんどの犬が改善します。。それぞれ治療処置が異なるため前立腺炎、前立腺膿瘍、前立腺腫瘍などとの鑑別も必要です。また、手術に耐えられない高齢犬や合併症がみられる場合には内科的治療を長期間続けて、症状の緩和が目的となります。また、若いうちに去勢手術をすれば、ほとんど発病はみられません。
前立腺肥大の原因は男性ホルモンと年齢によるものなので、去勢手術による予防が一番です。男性性ホルモンが分泌されにくくなると前立腺肥大のリスクは大幅に下がります。また、体質的にもともと前立腺が大きい場合には、早期に去勢手術を行いましょう。また、未去勢の場合は、普段から排便や排尿の様子を観察して異常が無いか見ておくのも大切です。