肝硬変
ポイント

  • 犬の肝硬変は肝臓に繊維細胞が増えて硬く変質してしまい肝機能が極端に低下した状態
  • 症状は初期では何となく元気がない、痩せてきたなど
  • 悪化すると食欲不振、腹水、痛み、黄疸、慢性の下痢や嘔吐
  • 悪化すると8割以上の機能が失われている為、かなり進行している
  • 肝細胞の合成機能や代謝機能が低下して低タンパク症や低血糖症を併発
  • アンモニアがそのまま血液に運ばれて肝性脳症(意識障害)を発症
  • 原因はウイルスや寄生虫、薬物等による慢性肝炎や急性肝炎
  • 他の原因としては損傷(事故)、門脈シャント、肥満、肝腫瘍、胆管結石、胆うっ滞、フィラリア症の末期
  • 原因不明で症状だけ進行していく特発性肝硬変もある
  • その結果、肝臓に繊維組織が増えて、硬くなり、肝細胞がゆっくりと壊れて肝機能が低下
  • 治療は血液検査の数値から肝硬変の進行を推測
  • 進行具合を把握する肝生検(かんせいけん)を実施
  • 肝硬変になると、一度壊れてしまった組織を再生することはできず、完治は不可能
  • 症状の緩和と進行を遅らせる治療
  • 他に疾患がある場合は原因疾患の治療
  • 並行して低脂肪で糖分やビタミンが豊富な栄養価の高い療養食を与える
  • 肝硬変と診断を受けると残念ながら余命はわずか

syouzyou肝硬変は肝臓に様々な原因によって長い間繊維細胞が増えて硬く変質してしまい肝機能が極端に低下した状態をいいます。初期症状は何となく元気がない、痩せてきたなどで肝硬変の病気を示す症状ではありません。肝臓は8割以上が機能できなくなると食欲不振、お腹に水が貯まる腹水、痛み、歯茎や白目、体の皮膚全体が黄色くなる黄疸などはっきりとした症状が現れます。しかし、はっきりとした症状が出たときには、8割以上の機能が失われている為、かなり進行している事がほとんどです。慢性の下痢や嘔吐も示して肝細胞の合成機能や代謝機能が低下して低タンパク症や低血糖症を併発します。さらに肝臓で老廃物となる尿素に分解されるはずのアンモニアが分解されずにそのまま血液に運ばれて脳に溜まる肝性脳症を発症し、意識障害も出てくる場合もあります。

ganin肝臓は代謝・解毒・タンパク質の合成など非常に重要な役割を果たします。肝臓に繊維組織が増えて、硬くなり、肝細胞がゆっくりと壊れて肝機能が低下します。通常、肝臓はダメージを受けてもすぐに新しい細胞と入れ替わりますが、肝疾患などで強いダメージを長い期間受け続けると、細胞の入れ替わりが間に合わなくなります。その結果、肝臓の中ある特殊な細胞の繊維組織が生産されます。この繊維組織がダメージを受けた細胞の変わりに穴埋めしていきます。しかし、穴埋めする事によって肝臓は維持できますが、繊維組織は肝臓にために機能する事はなく、最終的には繊維が多くなりすぎて肝臓全体を硬く変質させてしまいます。その原因はウイルスや寄生虫、薬物等による慢性肝炎や急性肝炎が原因です。他の原因としては損傷(事故)、門脈シャント、肥満、肝腫瘍、胆管結石、胆うっ滞、フィラリア症の末期による血液の循環不全などにも見られます。また、原因不明で症状だけ進行していく特発性肝硬変もあります。

治療血液検査の数値から肝硬変の進行を推測します。血液検査を施して進行具合を把握する為に針で肝臓に刺して細胞を確認する肝生検(かんせいけん)を実施します。進行により異なりますが、確定診断が出た場合は定期的にX線検査(レントゲン)、超音波検査(エコー)、血液検査を行い治療方針を決めていきます。肝硬変になると、一度壊れてしまった組織を再生することはできず、完治は不可能(不可逆的変化)です。そのため、症状の緩和と進行を遅らせる治療が行われます。他に疾患がある場合は原因疾患の治療を行い、並行して低脂肪で糖分やビタミンが豊富な栄養価の高い療養食を与えます。しかしながら肝硬変と診断を受けると残念ながら余命はわずかです。獣医師とよく相談して、病状の緩和・進行を遅らせましょう。