ポイント
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のどにある甲状腺が肥大し、甲状腺ホルモンが多量に分泌・活発になり、血液中の甲状腺ホルモン濃度が高くなる病気です。肥大した甲状腺が首に塊として見つかることもあります。人ではバセドウ氏病といわれていて、大きくなる原因はよくわかっていません。神経質で落ち着きがなくなり、異常に運動が活発になり、興奮しやすくなります。食欲が増進するにも体重は変わらず減少します。また、眼球の突出、心拍数及び呼吸数の増加(微熱)、多飲多尿、胃腸運動が進み、下痢の症状が見られます。また、高齢犬はカルシウム不足から骨粗しょう症の原因になったり、進行すると心臓に負担がかかり、心不全や過呼吸症を起こすこともあります。
犬が甲状腺機能亢進症を発症するのは1%~2%以下、とても稀な病気で、多くはその逆の甲状腺機能低下症を発症します。犬が甲状腺亢進症を発症する場合、甲状腺にできた腫瘍(約9割)や傷などの外的要因が原因で分泌が過剰になることや、甲状腺機能低下症の治療のために投与した甲状腺ホルモン剤が過剰だった場合に起きることが多いです。腫瘍ができた場合は、肺などに移転が早く、予後は非常に悪いです。
ヨード・チオウラシル剤の投与、レントゲン、X線照射、あるいは甲状腺の切除を行います。しかし、動脈、食道、気管などの腫瘍の周りの組織への侵略度が大きく、非常に難しい手術です。この場合、腫瘍の大きさを小さくすることは可能なので、症状の軽減にはつながります。甲状腺を摘出し、手術により回復した後は、適切な量の甲状腺ホルモンを一生与え続ける必要があります。家庭では高カロリー食とビタミン、カルシウム、リンを十分に与える必要があります。また、甲状腺ホルモン剤が過剰摂取が原因であれば、投与量を調整することで治る事があります。犬が良性腫瘍の場合(約10%)は、手術、放射性ヨード、甲状腺刺激ホルモン剤があります。薬の投与の場合は生涯服用が必要です。放射性ヨードと手術は完治に期待ができますが、麻酔のリスクと放射性ヨードの治療はどこでもできる治療法ではないので、最善の方法ではありません。また、どちらか一方の甲状腺のみを摘出することが多くあります。手術の後遺症としては甲状腺機能低下症の併発があります。